看護学校へ行こう
お部屋まわり
 入寮二日目から、各先輩達の部屋を訪問する「お部屋周り」が始まった。まずは三年生様からのスタートである。私たち一年生は、一学年30名定員なのに対し、入寮者が27名と、看護学校始まって以来の人数の多さだった。地方出身者が多かったからである。だが普通そんなにはいない。各学年15~16名といったところだ。だから将来3畳間を二人で使用することになるのだが、この頃三年生は少なかったので、一人部屋だった。

 お部屋周り時には先輩がお菓子とジュースを用意して待っていてくれる。だがそんなものはのどを通らない。上下関係の厳しさが2日でわかってしまった私たちは、凍り付いていた。最初に三年生の部屋をノックする。三年生はおおむね一年生には優しかった。この年頃は一年の差で、成長が随分違う。三年生はもう、見目麗しい女性だ。私たちのように高校を出たばかりのガキではない。

「おじゃまいたします。」

4人で小声でそう言うと、三年生の部屋にそろそろと入っていった。初めて入る3畳間。いくら一人で使っているとはいえ、さすがに狭い。この部屋を将来私たちは、二人で共有することになるのだ。三年生は実習と勉強で大変忙しいので、私たちが自己紹介や、どうしてナースを目指したかを聞くと、

「次があるんでしょ?もう行っていいよ。」

と解放してくれた。緊張しまくりの私たちにはありがたいことである。まあ、三年生でも中には偏屈な先輩もいたが、対して相手にもされなかった。
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