蜜事中の愛してるなんて信じない
 かちかちかちかちかち……

 ここはχに置き換えて、確か公式は――

 かちかちかちかちかち……

「ねえ……」

 耐え切れず、声をかける。

「終ったか?」

 正志は、一切私に視線をよこさず、携帯画面に視線を落としながら、抑揚の無い口調で呟いた。

 かちかちかちかちかち……

「うるっさいわね!
カチカチカチカチと!
アンタ一体何してんのよ!」

「見てわかんだろ。メール」

「相手は彼女かなんか知らないけどねえ、家に帰ってからやりなさいよ!」

「彼女じゃねえよ。ヤラせてくれる友人と知人」

「尚更、家でやりなさいよ!」

「なんで?」

「ジョーシキでしよ、ジョーシキ。
気が散って集中できないのよ!」

「そんなんじゃ落ちるな。受験」

 ムッキイィー!
 受験生にそんなこと言うなんて、無神経にも程があるわよ!
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