蜜事中の愛してるなんて信じない
素直じゃないのはお互い様なんだから

 その手が思いの外私の頭に馴染んでいるな、と思って、私は、頬が緩むのがわかった。
 その感触を思い出して、今、自分の顔が綻んでいる事にも気付いた。

「気持ちわり。何ニヤついてんだよ。
お前、知ってるか?
思いだし笑いって変態の証拠なんだぞ」

 正志は、テーブルの椅子に体育座りしている私の前に、焼きたてのトーストを置いた。

 食欲をそそる香ばしい香り。

「そんなのアテにならないね。
変態はこの人デスって、正志を指差された方がよっぽどしっくりくる」

「なるほど。つまり、この俺特製ガリトーは、いらないってことだな。
よくわかった」

 正志は、焼き上がったキツネ色の面がテラテラ光るガーリックトーストを皿ごと持ち上げる。
 ちりばめられたパセリの鮮やかな緑が残像となって頭に残った。

「正志ってそういうヤツなんだよね」

「なんだよ」

「自分は普通のトースト食べてさ、私には、ガリトー作ってくれる」

 正志は、前髪をかきあげ、そのついでとばかりに頭をワシワシかいた。

 照れているのだ。

「うるせ」

 小さく呟いて、コトっと皿を私の前に置いた。
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