蜜事中の愛してるなんて信じない
「穿け。風邪ひかれたら迷惑なんだよ」

 寝室から戻ってきた正志は、私の頭にバサっと布を被せた。

 それを掴んで、頭から引きずり下ろして見れば、私のスカートだった。

 両手でつかんだ青いストライプの綿スカートを見つめる。

「お前さ、何ムキになってんだよ。
言った言わないで事実が変わるわけ?」

 事実がどうとかの問題じゃないのよ。

 わかってるわよ。事実なんて変わらないし、それで私達の関係が変わるってわけでもないってことは。

 それでも聞きたいのよ。
 普通の時に、普通の声で、言ってほしいのよ。

「何で俺に惚れた?」

 俯いたままの私に突拍子もない質問が降ってきた。

 顔を上げると、予想を超える真面目な表情の正志。
 たじろぐ。

「な、何よ、薮から棒に」

「お前の『何で言わない』って質問は、これと同じだよ」

「全く違うわよ!」

「いや、同じだね。同じくらい不毛な質問」

 インテリB型の頭で考えることは、私には理解しがたい。
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