蜜事中の愛してるなんて信じない

 『何で俺に惚れた?』
 私の頭の中で繰り返し反芻される。

 中3の子供が大学生と週2で2時間一緒。
 それも密室の接近戦で、相手がちょっとかっこよかったりしたらかなりの確率でフォーリンラブすると思う。

 でもそれは、単なる一般論で、『私』が『正志』を好きになった明確な理由にはならない気がする。

 単行本に戻った正志を見る。ついでに正志が視線を走らせる文章を盗み見るが、漢字の専門用語だらけのそれに目眩を覚えた。

「頭がいいから?」

「何が」

「さっきの質問」

「頭がいいやつなんてこの世にごまんといるだろ」

「微妙に優しいから?」

「微妙ってなんだよ」

「うーん……カラダの相性?」

「お前、ヤってから惚れたのかよ」

「無愛想」

「はあ?」

「口が悪い」

「お前なあ……喧嘩売ってんの?」

「最近、愛撫が手抜き」

「……うるせ。早くそれ穿けよ」
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