蜜事中の愛してるなんて信じない
 低脳をバカにしてるとしか思えないこの理念は、実にやっかいだった。

 中3の夏休みと言えば、弱小部活動に所属している者は、さっさと引退を済ませ、やっと遊び回れるという時期なのだ。(特に私)

 それなのに、インテリ大学生正志マンは、実に自由奔放な勤続態度だった。

 週に2回、好きな時間に2時間。

 私の部屋に出向く曜日は疎らで、時間も10時から20時の間で無規則。

 いつもいきなり現れるのだ。

 家庭教師なんか無視して、遊びに行くという選択肢もあったわけだけれど、それじゃあ、まるで、私が正志から逃げてるみたいじゃない?

 逃げる、イコール、負けなのだ。
 それだけは、絶対ダメ。

 つまり、私は、夏休み中家に軟禁状態だった。

 しかも、ただ家にいるだけじゃない。
 いつも膨大な量の宿題を置き去りにして帰る。
 
 そうして、私の頭の中は常に正志でいっぱいになっていた。だだし、『怒り』と『不満』が主成分だったけど。

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