蜜事中の愛してるなんて信じない
「お前ってなんなのよ!」
 そう声を荒らげたいが堪える。

 怒りを示して子供っぽいと思われるもの癪だった。

 無言で一番奥の扉を指差す。頭の中で「それ」と吐き捨てながら。

 そうしたら、そいつも無言。
 私に再び背中を向けて歩き出した。

「なっ!」

 驚いて腹の底から声が出た。

 そいつは、なんの断りもなしに、さらに言うなら遠慮のかけらもなしにドアノブに手をかけたのだ。

 自分の部屋に帰ってきました、とでもいう雰囲気をかもし出しながら、私の部屋に足を踏み入れる。

 私は慌てて、自分の部屋の前に駆け寄った。

 部屋の前に立つと、私のベッドに腰をかけたそいつと目があった。

 自分の目を疑った。そして、まもなくして、自分の耳も疑った。

「早く入って来いよ」

 そいつは、気だるそうにそう言ったのだ。
 偉そうに!!
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