蜜事中の愛してるなんて信じない
 もう、なんて思われようが構わなくなって、怒りに任せて足音を鳴らせながら部屋に入った。

 ベッドに座るそいつの前に立った。
 足は肩幅程開いて、ちょっと気を抜いたら手を腰にあてちゃいそうな勢いで。

 気を抜かないように力んだ結果、そいつの肩を思いっきりどついていた。

 両肩を押されたそいつは、そのまま後ろ、つまり、ベッドの上に仰向けで倒れこんだ。

「ちょっと、アンタ――」

「お前、そういうことも教えてほしいわけ?
最近のガキは、マセてんな」

 横向きになって、肘を立て、上に向けた手のひらに頭をのせながら、淡々と述べる。
 私のつま先から頭まで面倒くさそうに見やり、買う気の無い家具の感想でもいうように。

「どういうことよ!」

「こういうこと」

 私は、手首を掴まれ、物凄い力で引っ張られた。
 わけのわからないうちに視界は反転し、気づいたら、私の目はそいつの顔だけを映していた。

「あ、キスはしねえよ。
惚れた女以外とはしない主義だから」

 何の宣言よ!

「あ、アンタ、何なのよ……」

 自分から発せられたとは思えないほどの弱弱しい声に、悔しさが込み上げる。

 なにうろたえてるのよ、私!

「家庭教っ!!」

 私の蹴り上げた膝が、見事そいつの股間にめりこんだ。
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