蜜事中の愛してるなんて信じない


「お前、眠れねえの?」

 突然、耳元で聞こえた囁きに、現実に引き戻された。

 仰向けの私は、目だけ動かして隣を見た。
 正志は、いつの間にかこちらに向き直っていて、別段眠れない私を心配しているふうでもない視線を向けた。

「正志が言ってくれたら眠れるかも」

 私は、正志から目を逸らし、天井を見ながら言った。

 ギシ。ベッドは音を立てて揺れ、私は60㌔の重量を全身に感じた。

「なんだ、やっぱり足りねえんじゃん」

 私に重なった正志は、表情を崩すことなく平然と言う。

「足りてるわよ、それは」

 だぶだぶのトレーナーに侵入したでかい手を引きずり出す。

「ねえ、言ってよ、今」

 正志は、一瞬困ったように表情をくもらせて、それから、私の唇に自分の唇を押し当てた。
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