かけがえのない唄
「俺は、話す。それで多分迷惑かけるけど……」




「純に迷惑かけられるとかいつものことだしな」




「運命共同体ってことで」



二人は優しすぎると思った。メンバーだし、年だって一つしか違わないけど、俺は二人の弟なんだな、と思った。



俺は昔と変わらず兄貴に頼ってる、弟。




「ま、これで別れろっていわれたら俺が紅実と別れなきゃいけなくなるし」



「俺も。美優とは別れたくないしな」



そうこっそりと耳打ちされたけど、多分それは建前で、健の、悟の、優しさがにじみ出ていた。





「サンキューな」




改まってお礼なんていつもは言わないことを言うと物凄く照れ臭くて。




「純がお礼とか、俺照れるー」




「うっせー」




としか言えなかった。



ただの照れ隠し。





「ほら、到着。純、社長から伝言」



携帯を開いて、マネージャーが言った。
社長から何か言われるとは思ってたけどそう改めていわれると背筋がすっと伸びた。



「常識考えて、言っていいってさ。後、ちゃんと歌えよ、だと」



社長も物凄くいい人だと思う。それとも俺に何を言ってもムダだってことが分かってるからだろうか。




「了解」



俺は短く返事して車のドアを開ける。




健と悟と共にマスコミの渦へと、堂々と向かった。




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