かけがえのない唄

想像以上のマスコミの数に、俺らも有名なんだなぁと思うのと、どんだけ暇人なんだ?と思った。




でも、俺には余裕がある。
妃菜が絡むと昔から俺は強かった。
弱い俺も強かった。
健と悟が呆れるほどに。




「ジュンさん、熱愛報道についてですが……」




ほらやっぱりね。
でもここでは言わないよ。
せっかくいい舞台があるんだから。





俺は後ろから来ている健と悟に囁く。




「今日の生で言うから」




そう。俺はここじゃなくてファンの目の前で、生放送の音楽番組で言おうと思っていた。




「言うと思った」




「あ、気づかれてた?」



言ったのは健だったけど悟も気づいてたのだろうと表情から読み取った。




やっぱり俺は二人には勝てないなぁ、とのんびり考えていた。




その間も勿論マスコミは騒ぎ立てていた。



だけどなんだかそれも心地よく感じてきて、にっこり笑って背筋を伸ばして堂々と、マスコミが作る道を歩いていく。




「ジュンさん……!」




あることを思いついて俺は最後にいたマスコミのマイクをとってこういってやった。





「今日の生放送みてくださいね」



極上の営業スマイルを添えて。




一瞬マスコミが静かになった隙をついて、建物の中へと入っていった。





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