群青の街
ーーーたく参っちまうなぁ……


レオンはもう一度、小さくため息をついた。

探し続けた憎き相手は、死体で見つかった。酷いかもしれないが、同情する気にもなれない。


レオンは、数時間前の出来事を思い出していた。








その電話は、出勤してすぐに入った。自分よりも先に出勤していたタナカがその電話を受けた。

『はい、こちら警官隊第一捜査支部。』

レオンは特別気にもせずに、朝の日課でもある、給湯室でコーヒーを入れ始めた。

『おはようございます。』

給湯室には、事務をやっているサナがいた。まだ24歳くらいの若い女子だ。本人は、早く現場に出たいらしいが、いかんせん男尊女卑の風潮がまだ残るこの組織では、サナの望みが叶う可能性は極めて低かった。

『おはよう。』

レオンは、それににこやかに返した。

レオンはこのサナを気に入っていた。いや、この第一捜査支部にいる人間なら誰もが、この明るく健気な若い女を気に入っているはずだった。

何の妨げもなく現場に出られる自分たちを見て、サナだって少なくとも、複雑な思いを抱いているはずなのに、毎日文句も言わずに雑務をこなす。そんなサナを、嫌う人間などいるはずもなかった。

『今日はいい天気ですよね。』

『ああ、そうだな。』

いい天気とは言っても、陽の当たらない街だから、そんなに変化は見られないが、確かにいつもより窓の外が明るいかな、などとレオンは思った。

そんなときだった。


『レオン隊長!』


タナカの、切羽詰まったような、自分を呼ぶ声が聞こえた。


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