群青の街
その声に、サナと一瞬目を合わせた。
『これ、頼んでいいか。』
『はい。』
入れたばかりのコーヒーをサナに渡して、給湯室を出た。
『なんだ。』
『ミナト町3番角から通報です。』
『ミナト町?また随分と距離あるトコから入ったな。で?』
ミナト町は、警官隊の本部を置いているこの《ヒノ町》から2つ町を越えた所にある。と言っても、ミナト町には警官隊の支部がないから、ここに電話が入ってもおかしくはないのだが。
『殺人です。』
『なに?』
その言葉に、一瞬にして緊張が走ったのが、自分でもわかった。
『被害者は?』
電話を握りしめたままのタナカに駆け寄った。しかし、タナカは俯きがちで答えない。
『おい、被害者は?』
もう一度、声をかけた。するとタナカはゆっくりと、その手を上げて、人差し指でどこかを指した。その指を辿って、視線をうつす。
その先にはーーーー。
『シン・タバタです。シン・タバタが…やられました。』
自分の目がその写真にうつる、ニヤリと笑ったそいつの顔を捉えたのと、タナカがそう答えたのは、ほぼ同時だった。
それから、とりあえず出勤していた部下を集めて、車を現場へ走らせた。自分たち警官隊が1年追いかけて、それでも足取りがつかめなかったあの男がやられた。その事実は、少なからず、レオンに敗北感をもたらした。
けれど、現場について、シン・タバタの死体を見た瞬間、その敗北感は消え失せた。代わりに、自分を襲ったのは、妙な安心感だった。その後脳裏には、闇に生きるあの少年の後ろ姿が写し出されていた。
『これ、頼んでいいか。』
『はい。』
入れたばかりのコーヒーをサナに渡して、給湯室を出た。
『なんだ。』
『ミナト町3番角から通報です。』
『ミナト町?また随分と距離あるトコから入ったな。で?』
ミナト町は、警官隊の本部を置いているこの《ヒノ町》から2つ町を越えた所にある。と言っても、ミナト町には警官隊の支部がないから、ここに電話が入ってもおかしくはないのだが。
『殺人です。』
『なに?』
その言葉に、一瞬にして緊張が走ったのが、自分でもわかった。
『被害者は?』
電話を握りしめたままのタナカに駆け寄った。しかし、タナカは俯きがちで答えない。
『おい、被害者は?』
もう一度、声をかけた。するとタナカはゆっくりと、その手を上げて、人差し指でどこかを指した。その指を辿って、視線をうつす。
その先にはーーーー。
『シン・タバタです。シン・タバタが…やられました。』
自分の目がその写真にうつる、ニヤリと笑ったそいつの顔を捉えたのと、タナカがそう答えたのは、ほぼ同時だった。
それから、とりあえず出勤していた部下を集めて、車を現場へ走らせた。自分たち警官隊が1年追いかけて、それでも足取りがつかめなかったあの男がやられた。その事実は、少なからず、レオンに敗北感をもたらした。
けれど、現場について、シン・タバタの死体を見た瞬間、その敗北感は消え失せた。代わりに、自分を襲ったのは、妙な安心感だった。その後脳裏には、闇に生きるあの少年の後ろ姿が写し出されていた。