明日死ぬ
暗がりに馴れた目で見回しても誰もいないようだ。

舞台の反対側の方がより暗い気がしたのでそちらに行き、壁にもたれて昨日からの一連の出来事を思い出す。

ずっと逃げていた。

追う連中の目は嫌悪と軽蔑ばかりだった。

そんなやつらにムカついて俺も嫌い返してきた。

でも逆だったのかも知れない。俺が嫌うから相手も嫌い返してきていたのかも知れない。

自分発の憎悪が跳ね返ってきて、俺はそうとも知らずにそれらから逃げ回っていたのだろうか。

もしそうなら俺はとんだ間抜け野郎だな。

苦い笑みを思わず浮かべると、さっき蹴られまくった時の怪我が痛んだ。

まあいい。どうせもうすぐ何もかもに決着が着く。

壁にもたれてぼんやりしていたらフイに俺以外の誰かの足音が響いた。

振り向くと俺が開けた扉から若い女が入って来ていた。

俺は俺に気付かないそいつに声を掛けた……



 ―ケイゴの場合·終―

< 158 / 203 >

この作品をシェア

pagetop