明日死ぬ
もう今からブレーキを踏んでも間に合わない。

逸らす事もできない視野いっぱいに貨物トラックの荷台が迫ってきたその時だ。

「あばよジジイ。せいぜい祈れ」

俺を縛り操っていた何者かは、俺の口でそう言い残して俺を解放した。

体の内側から外に向けてヘドロが流れ出るような不快感の後、俺は体の自由を取り戻した。

直後に車はトラックに突っ込んで大破した。

その間に俺に出来た事は目を閉じる事だけだった。

祈る時間はなかった。

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