明日死ぬ
『ルールを破る』

その言葉の意味がサナエさんに浸透するのには少々時間がかかったが、しばらくすると彼女は両手で口元を隠し見開いた目でケイゴ君を凝視した。

その目ははっきりと『信じられない』と言っている。

そんな視線を受けてケイゴ君は唇の端をひん曲げて得意げに笑った。

「そうです。時間までにここに来るというルールは守ったのだから破ったのはもうひとつの方のルールです」

「誰かに……言ったの?」

恐る恐るサナエさんはケイゴ君に聞くがケイゴ君はニヤニヤするだけで答えない。

仕方ないので私が教えてあげた。

「ケイゴ君が今日死ぬ事を聞かされた方は、友人知人たまたまそこにいた通りすがりの人々合わせて八十七人です。もうすぐ彼と共に死ぬ運命……ですかね」

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