明日死ぬ
壁掛け時計を見ると約束の時間まで一時間を切っていた。

もう行こう。遅刻する訳にはいかないわ。

もう帰って来れないし、どうせあの世へは何も持って行けないだろうから身軽な方がいい。

ケータイも財布も机の上に並べて置いて手ぶらで部屋を後にする。

私が出掛けようとしているのに気付いたお母さんが訝しそうに声をかけてきた。

「サナエこんな時間にどこか出掛けるの?」

「うん。ちょっとコンビニ行ってくる」

嘘ついてごめんなさい。

「そう。気をつけてね」

「うん」

外にでて自転車にまたがり振り向かずに漕ぎ出した。

今まで私を包んでくれていた優しさに背を向けて。
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