明日死ぬ
気が付けば俺はソイツの胸ぐらを掴んでいた左手を離して飛び退くように下がっていた。

「な、な、なんなんだテメーは!今どうなったんだ!」

威勢よくわめきたかったが、我ながら情けない声が出てしまった。

相変わらずヤツは無関心そうにしている。

クソッタレ無視すんな。

「どーなったって?通り抜けたんだよ。お前も見ただろ?」

そんなハズねーぜ。だが俺が言い返そうとするとそれを制するように手の平を向けてきた。

「いちいち面倒クセーから少し黙ってろ。説明してやる」

ヤツからは『面倒だが仕方がない』といったイヤイヤな雰囲気がはっきりと感じられ、おかげで俺の緊張感は少し緩んだ。
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