愛に溺れろ。

放課後―


用事があるからと麻美は先に帰り、
あたしは1人廊下を歩く。


本当にメイド喫茶なのかなー…
でも、もうやるしかないよね。


うん、そうだ。
やるしかないんだ!




「よし、頑張ろうっ!」


「何を頑張るって?」


「ほぇ?」


ふい聞こえた低い声に、
後ろを振り返る。



「あ、あつ!…ふがっ」


「馬鹿が。叫ぶな」


敦志の鋭い視線にコクコク頷くとそっと手を離してくれた。



「何でここに?」


「は?お前…目の前の教室見てみろ」


「え?」


敦志の言葉に、すぐ目の前の教室に目をやる。



「あ……」


そこには『化学準備室』
と書いてあった。


「帰るんじゃないのか?」


「…帰るよ」


「ここは下駄箱とは反対方向だけどな」


「……あ」


不敵な笑みを浮かべる敦志に、
あたしは顔を赤くするだけだった。



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