愛に溺れろ。
気付いた時には、時既に遅し。
バン!と顔の横に手を突かれる。
「さっき頑張るって言ったな?」
「…………」
こ、怖い……。
「言った、よな?」
『言った』って所を強調されてしまい、
もう素直になるしかなくなった。
「…はい、言いました……」
「お前、メイド喫茶知ってんのか?」
「…知ってるよ」
「ふーん。で、頑張るって?」
ひぃ~!!
敦志の目が怖いよー!
で、でもここで食い下がるわけには…!
「だ、だってね!クラスのみんなもヤル気だし、麻美だって楽しみにしてて…あたしだけ乗り気じゃなくて皆に迷惑かけるの嫌だし……。そ、そりゃあ、あたしだって正直言うとやりたくないけど…でも……」
そう言ったきり言葉が出て来なくて、
あたし達の周りを沈黙が包み込む。
あ、謝った方…良いのかな?
そう思って謝ろうとした瞬間…-
「あの!敦志、ごめ……っ!」
ぐいっと腕を引っ張られ、
敦志の胸の中へと抱きしめられる。
煙草の匂いが、鼻をかすめる。
「あ、敦志……?」
「……わりぃ。怖がらせた」
さっきとは全く違う優しい声が、
頭の上から聞こえた。