愛に溺れろ。
3.相愛
・敦志side
「……遅い」
今は8時30分。
時間的には早いが、
約束の時刻は8時だ。
30分も、俺を待たせるか……。
「あっ、あの……」
「ったく!おそ……い」
怒りを露にして振り返ると、そこには可愛くオシャレをした、里香がいた。
「ご、ごめんなさいっ。準備に戸惑って……」
「行くぞ」
「えっ?」
「早くしろ。車はあっちに止めてある」
「あの……せんせ?」
「何だ」
「怒って……ないの?」
「怒ってるに決まってるだろう」
俺がそう言うと今にも泣き出しそうに俯き、黙り込む里香。
「……でも」
「え?」
「お前が可愛いから、もう良い」
チラッと里香の顔を見ると、
すでに頬は真っ赤になっていた。
「時間がない。早く来い」
「う、うん!」
ニコッと満面の笑みを見せると
小走りで俺の隣へやって来る。
どれほど、この日を待ち望んだか……。
里香は今、俺の手の中にいる。