愛に溺れろ。
「なっ…-!?」
信号がちょうど赤に変わった瞬間を見計らって、里香の後頭部に手を回す。
そしてそのまま、
里香の唇に自分の唇を当てた。
「ん……って、え?」
軽く触れるだけの、一瞬のキス。
里香と目が合い、
不思議そうに俺を見る。
「何だ?もっと濃厚なのを期待してたか?」
「ち、ちがっ…!」
「残念。信号はもう青だ」
「だから違うよ…っ!」
「お前の嘘は聞き飽きた」
その後も里香はブツブツ言っていたが、俺はそれを全部無視した。
無駄だと言うことが分かったのか、里香は途中で諦め、いつのまにか眠りについていた。
「お前望みは、着いたら叶えてやるよ」
隣で気持ちよさそうに眠る里香の髪をそっと撫でる。
「んんっ」と声を出し、
里香は俺の方へ寝返った。
信号が赤になり、車を止める。
スースーと寝息を立てる
里香を見てフッと鼻で笑うと、
起こさないように、
そっとキスを落とした―