愛に溺れろ。
「も、もちろん!」
「……そうか」
一瞬悩んだ敦志は「仕様が無い」と呟き、あたしの方へ振り向いた。
「今回は、諦めてやる」
よ、よかった~…。
安心して、一気に気が抜ける。
「言っとくが、今回は。だからな?」
「え?」
つまりそれって……-
また来た時は乗るってこと?
「そんなのっ「じゃあ今から乗るか?」
「……い、いじわるぅ」
「最高の褒め言葉だ」
ハハッと笑った敦志は、
あたしの手を引いて歩いて行く。
「ねぇ、次は何処に行くの?」
「さぁな、適当に入るさ」
「ジェットコースターは駄目だよ?」
「安心しろ、約束は守る」
ふー…、よかった。
敦志のことだから、他のジェットコースターに乗るのかと思っちゃった。
「ただし、」
「ん?」
「お前も、約束は守れよ?」
……そっか。
何でもきくって約束したんだよね。
「うん」
あたしの言葉に満足した様に微笑んだ敦志は、「あれ乗るか」と言ってコーヒーカップを指差した。
大きく頷いたあたしを見て、
敦志はクシャと頭を撫でた。
大きくて、優しい手。
あたしを丸ごと、
包んでしまいそうな……。
誰も、触って欲しくない。
誰にも、渡したくない……。
そんなことを思いながら、
絡む手にそっと力を入れた。