愛に溺れろ。

女はニコッと笑うと、何も言わずにその場から消えた。








……やべっ、名前っ!



俺が気付いた時にはもう、
あの子の姿は見当たらなかった。


呆然と立ち尽くしていると、
後ろから俺を呼ぶ声がした。



「ごめん、ごめーん!待ったぁ?」





俺の傍に近寄って来たのは、
1時間以上も俺を待たせたクソ女。




キツイ香水をプンプンと匂わせ、
大きな胸を俺の腕へ押し当ててくる。







……やめろ。

彼女の声を、匂いを、美しさを、お前なんかに消されてたまるか。






「離れろ」




「えー、なにぃ?怒ってるのぉ?本当ごめんって。ちゃんと夜は奉仕するか「黙れ」







「あっ…あつ……し?」






「俺に触れて良いのはお前じゃない。お前はもう……用無しだ」

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