愛に溺れろ。


「ねぇ、さっきの……」


そう言いかけると、
敦志の瞳が鋭く光る。


「黙れ。何も問うな」


「……ぅん」


敦志の冷たい言葉に、肩が落ちる。

でも、嫌がってる訳じゃない。
多分、これは敦志の照れ隠し。



そう思うと、
自然と笑みが零れた。



「里香、」


ふいに呼ばれた名前。


笑みを隠し、
敦志に顔を向ける。



だけど敦志は、
前を見据えたまま。



「ん?」


「さっきの言葉……嬉しかった」


「えっ?」


「一回で聞き取れ。もう言わん」



嬉し……かった?
さっきの、言葉……?



少しずつ頭の中で整理し、やっと理解が出来た頃には、頬が赤く染っていた。




「俺は沖の深い底で、ずっと溺れている」



急に歩くのを止めた敦志が、ボソッと呟く。



「お前も早く、俺に追いつけ」



やっとあたしの顔を見た敦志は、あたしと同じくらい顔が赤く染まっていて、何だかすごく幸せな気持ちになった。



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