愛に溺れろ。

「覚えて……いるのか?」


「え……?」


「あの日のことを……覚えているのか?」




あの日の……こと?

まさか……もしかして……―




「敦志こそ……覚えてるの?」




あんな一瞬の小さな出来事。



煙草を捨てた人に少し腹が立って、
咄嗟に声を掛けてしまった。




振り向いた貴方は綺麗で、格好良くて。



一瞬で、目を奪われた。


あの日のこと、
忘れたことはなかった。




入学式で会った時は正直ビックリして、心臓の鼓動が止まらなかった。



本当は気付かぬ内に、
恋してたのかもしれない。




その気持ちを隠すために…


あたしは他の人を
無理矢理に好きになった。




もしそれが、あたしの
本当の気持ちだとしたら……



あたしはどこまで
敦志に溺れれば良いのかな?


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