愛に溺れろ。
「ちょっと声大きいって!」
そう言いながら口に人差し指を当てシーッとする彼女……
嘘……、さゆり?
話の中心にいたのは、
同じクラスの早河さゆりだった。
すごく可愛くて、何度も告白されたところを目撃したことがある。
「あ、ごめーん。それでいつ?どうやって行ったの?」
「えへへー…。昨日ね、マンションに突然押しかけちゃったんだ♪勉強でどうしても分からないとこがあるって」
ドクン―ドクン―
「そしたらー……」
さゆりの意味ありげな言葉の途切れに、思わず息を呑む。
「『入れ』……って言われちゃったぁ!」
ドクッ―
今までより一層、
心臓が大きく跳ねた。
みんなの叫ぶ声が、
全く耳に入らない。
入れ?
敦志がそう言ったの?
訳が……分からない。
昨日って……。
あの後のことだよね?
そんなあたしの気持ちなんて知るよしも無く、話は続けられる。
「でもよく分かったね。あっちゃんのマンション」
「まぁね♪すでにリサーチ済みでしたから♪」
そう言って照れるさゆりを、
周りの友達が冷やかす。
それでも、あたしの
思考回路は上手く動き出さない。
ねぇ敦志……。
どう言うこと…?