愛に溺れろ。


「ん?」



「だから、櫻井先輩に告白した時には……正直何で?ってなった」



あ……

櫻井 渉。
たった一ヵ月の恋人。



かっこよくて皆の中心にいて、この人なら良いかも?って告白をしてしまった。



『好き』って感情があったのかは、実際のところ分からない。だけど、自分ですら気付かなかったなんらかの感情。それを抑えるために無理に『好き』だと自分の心に言い聞かせた。



今なら……その何かが分かる。

敦志が好き。
ただ……それだけ。



「そっか……」



敦志への気持ちを麻美に伝えた今。
穏やかな微笑みを浮かべる麻美。



だけど、納得いかないことがある。



「でもね、麻美。あたしが敦志を好きなのは分かったとしても付き合ったのまでは分からないよね?」




「え?分かるよ」



「ど、どーして!?」



「あたしはいっつも隣で里香を見てきてるって言ったでしょ?里香の顔や行動を見たら分かるよ」



「そう言うもの?」



「まぁ、それからあっちゃんも見るようになって気付いたんだけどね」



そう言ってニカッと笑った麻美。


親友には敵わない……
そう思った今日この頃。


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