愛に溺れろ。
・敦志side
「ホラ、もう戻れ。2限目からは必ず出ろ」
「……うん。分かった」
俺の言葉に素直に頷き、
腕の中から離れる里香。
何とも言えない寂しさが、
俺の胸を苦しめる。
そんなことも、
お前は気付かない。
だから早河との仲を疑ったんだろう?
俺がどれだけお前を想っているか……。こんなに言葉にも、態度にだって出しているのにまだ気付かないなんてな。いい加減呆れてくるぜ。
だったら、教えてやるよ。
「里香、今週の土曜空けとけ」
「え?」
「いいな、空けとけよ」
「え、何で?」
「何でもだ。早く行け」
そう言って無理矢理
里香を外へ追いやる。
授業中にこんなところを誰かに見られたら面倒くさいからな。
振り返る里香を一回だけ見送り、
一瞬微笑むと、化学準備室へ入った。