GUN
それは、序章に過ぎない


 ドーラの風はすさんでいる。


 ドーラの地面は、汚れている。


 ドーラの水はにごっている。


 それでも、ドーラの火だけは、煌々と燃え滾る。


 忌まわしき炎の精霊。


 6英雄のリーダ格を勤めたからといって、調子に乗るな。


 水の民、アイスラ国民、グストは、ドーラの町を歩きながら思う。


 麻でできたマントは、身体だけでなく、顔や口元、全てを防ぐ。


 この土地に慣れないものは、息をするのも困難だ。


 環境汚染が進んでいるとは聞いていたが、これほどだとは考えもしなかった。


「いらっしゃい。」


 ドーラの工場地帯の中にある小さな酒場。


 ライスト国をめぐり、手繰り寄せた情報。


 あいつがいるとしたら、ここのはずだ。


 目を凝らして、辺りを見渡す。


 ・・・・いた。


 グストは、そのマントをつけたまま、顔だけを出し、店主にとりあえず酒とだけ頼み、腰をつけた。

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