キミと雨
こんなに僕の心を温めてくれた彼女は、もう見えない。

分かっているけど、もう一回だけ振り返って小さく鳴く。


「…にゃぁ。」


雨音に掻き消されて、微かにしか聞こえないその声は届くわけがない。

何回も、何回も呼びたい。
でも、それさえする気力がなくて、余計に辛くなりそうで止めた。

一瞬で温められた心は一瞬で熱を失って冷えきる。


だからといって、来た道を戻ることだけはしない。

もう一度会いたい、そう思っても、それだけはしたくない。
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