キミと雨
見上げたその先で彼は相変わらず微笑みを浮かべていた。
ゆっくりと自分に向かって伸ばされた手を迷う瞳で見つめる。
逃げる、という考えはなぜが浮かばなかった。
そっと僕の頭に触れた手は、ワンピースの彼女より大きくて暖かい。
何度か感触を確かめるように頭を撫でるといきなり持ち上げられた身体。
汚れるにも関わらず、しっかりと抱きしめてくれたから抵抗する気にもならない。
「俺の家、おいで。」
……にゃぁ。
優しいその言葉に嬉しくなって、返事をするように僕は小さく鳴いてみた。