Fate word


リビングに入ると、桜子の言った通り食卓に用意されていた。
私はテレビもつけることなく、茶碗にご飯を。
そして、1人でぽつんと食べ始めた。
お母さん、もう仕事に行ったんだ、なんて考えてると桜子が入ってきた。


「どうしたの?」

「由美子、本当に塾やめるの?」

「…うん」

「何で?」

苦笑すると、桜子は私の向かいに座った。


「…勉強嫌いだからさ」

「嫌いだからこそ、好きになろうとしない訳?」

「嫌いだからムダじゃん。好きにはなれないの」

「そうやって、何でもかんでも決め付けてると、いつか後悔するよ」


桜子は私の目をじっと見つめた。
私は思わず目を逸らしてしまい、なんだか負けた気分になった。


「由美子が止めるなら、私が入るよ」


そう言って、桜子は自分の部屋へと戻った。

何が"後悔するよ"よ…。自分はできるからって。あれ…勉強できるんだし、塾入る必要なくない?
私はご飯を食べ終えて、しばらくその場でボーっとしていた。



「…あれ、今何時…―」


気付くと、もう10時ちょい前だった。
家にはもう桜子はいなかった。
私は家の鍵をしっかり閉めて、マンションを出た。

少し歩いたら、見える例の公園。
ベンチにはもう…―あの人がいた。


「お、久しぶり」

そう笑って手を軽くあげた怜治。
私も、そっと手を振り返した。


「久々だね、どしたの?」

「いや、どしたって…そっちこそ」

「私は全然大丈夫だけど…」

「塾きてないじゃん」

「ただ…勉強が、嫌いだから」

「本当に、それだけの理由?」

「、…うん」

それだけって…。何それ?私の気持ちなんて、何も知らないくせに。

< 27 / 30 >

この作品をシェア

pagetop