青春の蒼いカケラ
青春競馬編

とりあえず、青森の高校を卒業して、はるおちゃんと、東京で就職した。でも二人とも会社を辞めちまった。
「なおちゃん」
はるおちゃんが、大声で訪ねてきた、五月の連休の日だった。
「よう、はるおちゃん」
阿佐ヶ谷のボロアパートに住んでいた。天気の良い日だった。
「面白い事やってきたぞ」
「女か?」
「いやいや」
はるおちゃんは、何か新聞のような物を出して説明しだした。
「儲かる話だ・・・世の中捨てたものじゃあないな・・・」
競馬の話を言い出した。大井競馬のトゥインクルに行って来たらしい。なけなしの一万円が五十万円になったらしい。なおとは、はるおちゃんの話を聞いても、さっぱり分らなかった。お金が儲かるのは分かったが、競馬新聞を見せられても理屈がわからない。とりあえず、どこかで毎日やっているらしい。
「明日行くか」
なおとは軽くうなずいた。 

朝起きたら、はるおちゃんがスポーツ新聞とあんぱんを買ってきた。どうやら大井競馬のトゥインクルらしい。 
「資金は五十万円、あとは増やせばいい」
はるおちゃんは、やる気満々だった。なおとは五十万円がもったいないと思い始めていた。なおとは財布の中に一万円しか入れておかなかった。はるおちゃんは、昨日稼いだ五十万円を、そのままもって行くらしい。
「今日は、大井競馬だが、後楽園へ行こう」
はるおちゃんが言い出した、後楽園でも馬券は売っているらしい。はるおちゃんも初めて行くらしく、何か心細くなってきた。
「はるおちゃん、何時からやるんだい」
「新聞を見たが三時からだ」
「まだ朝の九時だぞ」
「喫茶店でも行って、研究しよう」
はるおちゃんは、赤いペンとスポーツ新聞を持ってスタスタ歩き出した。電車は空いていて、電車の中
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