白い背中
「先生…。
私はいつになったら退院できますか?」
それは、明日香が退院した翌日だった。
佐藤先生は少し黙って、
「ゆいさんは、
入院して、どれくらい経ったっけ?」
「…、半年ぐらいです。」
「…そっか。
そりゃあ、早く退院したいよね。
でも、まだ無理かな…。」
「なんでですか!?」
ゆいは目に涙を浮かべていた。
「わかってると思うけど、
ゆいさんは、
心臓病だね。
だから、移植手術を
しなきゃいけないんだ。
それがすむまでは…。」
佐藤先生は、静かにいった。
「わかってます!!
わかってるけど、
明日香も退院しちゃって、
南美と愛も外泊ですよ!?
私も外泊はしてるけど、
早く退院したいんです!!」
涙が、こぼれた。
「…、高校生にもなって、
こんな我がまま言って、
ごめんなさい…。」
佐藤先生は
そっとハンカチを差しだした。
そして、
頭をなでてくれた。
「さ、さとうせんせ…。」
ゆいは必死に顔を腕で隠している。
でも、その腕と顔の隙間から
涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「ごめんね、ゆいさん…。
俺も一緒に頑張るから。」
その時の佐藤先生の手は、
とても温かかった。