【片想いの体温】
「先生っ。」

ルミちゃんが声を掛けた。私も隣に並ぶ。

「おっ、本庄。・・・っと?」

ルミちゃんの事は分かった。・・・やっぱり先生も、男。

美人の生徒はすぐに覚えてもらえる。

そして私の名前はやっぱり出てこない。




「・・・渡良瀬です。」

「夜、遅いぞ。9時過ぎて家の人、心配するぞ。」

「私達、ライブ行ってきたの。これから渡良瀬さんちで
 夕食食べるんだけど、先生も一緒にどうですか?」


「・・・うち、レストランなんです。」

これだけ言うのがやっとだった。

「そう。・・・じゃ、コーヒー飲みがてら、送ってってやるか。」



“手代木先生が、うちに来る!”

信じられなかった。



手代木先生を初めて見た時、多かれ少なかれ
女生徒達はみんな心を奪われた。

私も例外ではなかったけど、あの冷静なルミちゃんまでが

「素敵だわ。」

と、うっとり見ていた・・・。





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