Silent Song
東京の夜は明るい。
ましてそれが新宿の繁華街だったりしたら尚更だ。
深夜になっても消えることのないネオンが反射して、空を照らしている。
その下をあたしは歩いてた。
あたしはいつものごとく、イシスのライヴを観に行って上機嫌で帰路についているのだ。
靴擦れしたかかと、飛び跳ねてできたアザ、ヘドバンしすぎて痛くなった首もちっとも気にならない。
だってこれは言うなれば“名誉の負傷”ってヤツだから。
網膜に焼き付いた凪沙の動きをなぞってギターを弾く真似をしてみた。
どうしたらあんな音が出るんだろう。
心臓抉るみたいな痛くて鋭い音。
全身で叫んでる音。
それから、春の雨みたいに優しい音。
あんなの、絶対誰にも真似できない。
凪沙の音のおかげで、あたしは毎日頑張れるんだよ。
凪沙にいつかありがとうって、言いたいな。
凪沙のこと、考えながら歩く。