善と悪の狭間で・・・
プロローグ
家々が真っ赤に燃え、音を立てて崩れ去る…
木も、草も、花も、全てが燃え盛る炎に包まれ灰となる…
人々は地に倒れ、体中から血を流す…
恐怖に顔を歪め、苦痛に顔をしかめた…
その町の中、1人の少女が泣き叫ぶ赤ん坊を抱く夫婦を見下ろし立っていた…
その顔は無表情で、何の感情も感じられない…
身に纏う真っ白なワンピースは血に染まり、プラチナブロンドの髪にはべっとりと血が付着する…
「お願いです……この子だけは………この子だけは………」
目の前の少女に請うように、赤ん坊の母であろう女性は、瞳に涙を浮かべ訴える…
赤ん坊をギュッと抱き締める女性を見ても、少女は顔色一つ変えなかった…
何の色もないその表情で、彼女は赤ん坊へと手を伸ばし母親から奪い取る…
赤ん坊が少女の手に渡ると、両親は何度も頭を下げて頼み込む…
「私達の命はどうなってもいい……しかし、その子の命だけは、どうか…どうか………」
そう言う父親を見て、少女は赤ん坊へと目を落とす…
先程まで泣き叫んでいた赤ん坊は、何故か涙を止め、少女を見上げ笑っていた…
そんな無邪気な表情を見た少女は、無表情の顔に笑みを浮かべるのだった…