善と悪の狭間で・・・

人里離れた誰も近寄らない地があった。

年中霧が漂い、不気味なその地。

数十人もの子供達が行方不明になったと言う噂もあると言う。




霧に包まれた嫌な雰囲気を漂わす古びた城が1つ。


1人の男が右手で顔を覆ながら片手で重い扉を開き、ゆっくりと城の中に入って行った。





 「……っ………」


銀色の髪をした男は数歩歩いた後床に膝を付く。


顔を両手で覆ったまま辛そうに息をしていると…





 「ファントム!」


黒髪に黒のスーツを来た女が走ってやって来た。


心配そうに肩に触れ、男の顔を覗き込むと顔をしかめた。



指の隙間から見える彼の顔の皮膚は爛れ、骨までも見えている。






 「…1000年の時が経ったんだ………こんなはずじゃ………」


男、ファントムの言葉に女は慰めようと口を開くが…






 「!あ"ぁ"ぁ"ーー!」


彼女は突然悲鳴を上げるとファントムを突き飛ばし右目を覆う。



突き飛ばされたファントムは覆っていた両手を顔から放し、ゆっくり立ち上がると女を見下ろした。


その顔は爛れてはおらず、何も無かったように元に戻っている。




見下ろす女は苦しそうに唸り、恐る恐る右目を覆っていた手を放す。


放した掌は真っ赤に染まり、瞑った右目からは血の涙が流れ出る。




顔を伏せる彼女は痛みからか肩を震わせていたが、ファントムを見上げる彼女の口は笑っていた。







 「貴方の為だったら、何でもあげる……私の命だって………」



不気味な笑みを浮かべ血を流しながら言う女に、ファントムは妖しく目を細めるのだった…





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