善と悪の狭間で・・・
3人と向き合って席に座るジゼルは、自分の目の前に置かれた物を物珍しそうに見つめていた。
「どうした?」
珈琲を飲んでいたヴェルディは、ジーッと目の前に置かれた物を直視しているジゼルに不思議そうに尋ねた。
「これは……?」
ヴェルディの声に顔を上げたジゼルは、二等辺三角形のフワッとしたスポンジに真っ白なクリームが塗られ、その上に真っ赤な物体がちょこんと乗っている物を指差す。
「ケーキだけど?ショートケーキ。」
その問いにはリョーガがジュースを片手に、ストローで中身をかき混ぜながら答えた。
リョーガへ顔を向けた後、再び目の前に置かれたケーキを観察するように眺める。
「ショート、ケーキ………」
「そう、女の子って大半好きだと思ってたけど………嫌い?」
ゆっくりと呟いたジゼルに、コウガは優しい顔のまま眉根を下げた。
紅茶を両手で持ち心配そうな顔をするコウガに、ジゼルは何度も頭を横に振る。
「いえ、初めて見るもので……」
「そうか……1000年前にはこんな食べ物無いからな………」
ジゼルの言葉に顎に手を添え考えるような仕草を見せるヴェルディ。
尚も観察し続けるジゼルを見たリョーガは、一口ジュースを飲むと口を開く。
「だったら食ってみれば?」
リョーガの言葉に一瞬皆の動きが止まったが、それはそうだとヴェルディとコウガは頷き、ジゼルはケーキに手を伸ばす。
二等辺三角形の頂点の部分をフォークで切ると、恐る恐ると言った感じでゆっくりと口に運んだ。
口に含みモグモグと噛んでいる中、ジゼルの前に座る3人は無言でそれを見つめていた。
ゴクリと飲み込むのを確認すると、
「どう?」
表情を一向に変る事のないジゼルに、コウガがそっと尋ねると、
「………美味しいです。」
にっこりと微笑みそう言うと、再びケーキに手を伸ばす。
美味しいと言う言葉と幸せそうに微笑むジゼルを見た3人はホッとし、体から力が抜けたように椅子の背もたれに寄りかかるのだった。