善と悪の狭間で・・・

藍色の空はいくつもの宝石を身に纏い、角度を変え眩い光を放っていた。


白い壁に色とりどりの屋根。

窓からは光が漏れ、賑やかな声が歌声と一緒に流れて来た。


同じ形をした家々が建ち並ぶ町の中を、3人の美少年と1人の美少女が並んで歩いていた。

暗闇の中足下を照らすのはリョーガの掌の小さな炎。


他愛もない会話をしながら歩を進めていると、4人は一軒の家の前で足を止め、ヴェルディは目を瞑り何かを呟く。

短く呟くとゆっくり目を開き家の敷地内へと足を踏み入れる。


その後をコウガとリョーガが続き、遅れてジゼルが3人を追う形で家の中へと姿を消した。



家の中に足を踏み入れると、玄関の扉は自動的に閉まり、厳重に鍵までもかけた。


背後からの鍵の音に振り返る事なく、ジゼルは驚いたように目を見開き立ち尽くす。


と言うのも、目に入るのはとても豪華で広大な空間だったからだ。

玄関には綺麗な花が飾られ、部屋へと繋がる廊下は輝いて見える。

目を細めても家の奥は見えないし、いくつも部屋が並んでいる。



外から見れば他の家と変わらない普通の一軒家。

なのに、一歩家の中に足を踏み入れると、豪邸のように広い空間。


パチパチとまばたきを繰り返していると、


 「ジゼちゃん?」


コウガが目の前で心配そうに手を振っていた。



 「大丈夫?ボーッとしてたけど?」


 「は、はい。大丈夫です。」


すぐ目の前にコウガの顔がある事に気づき慌ててそう答える。

するとコウガは優しい笑みを見せるのだった。



 「魔力で構成してんだよ。この花も廊下も全て。」


ジゼルの様子に何に驚いているのか気づいた様子のリョーガは、赤い花にそっと触れながら言う。



 「広さとか様式は魔力の大きさによって異なるけど。今は兄貴の魔力で構成してっからこんなに広い訳。」


 「仕方ないだろ。お前がやったら家ごと燃やし尽くす。コウガは構造が複雑すぎて落ち着けないからな。」


ジゼルはリョーガの説明に頷き、コウガはヴェルディの言葉に普通じゃない?と返す。





< 16 / 33 >

この作品をシェア

pagetop