善と悪の狭間で・・・
藍色の空はいくつもの宝石を身に纏い、角度を変え眩い光を放っていた。
白い壁に色とりどりの屋根。
窓からは光が漏れ、賑やかな声が歌声と一緒に流れて来た。
同じ形をした家々が建ち並ぶ町の中を、3人の美少年と1人の美少女が並んで歩いていた。
暗闇の中足下を照らすのはリョーガの掌の小さな炎。
他愛もない会話をしながら歩を進めていると、4人は一軒の家の前で足を止め、ヴェルディは目を瞑り何かを呟く。
短く呟くとゆっくり目を開き家の敷地内へと足を踏み入れる。
その後をコウガとリョーガが続き、遅れてジゼルが3人を追う形で家の中へと姿を消した。
家の中に足を踏み入れると、玄関の扉は自動的に閉まり、厳重に鍵までもかけた。
背後からの鍵の音に振り返る事なく、ジゼルは驚いたように目を見開き立ち尽くす。
と言うのも、目に入るのはとても豪華で広大な空間だったからだ。
玄関には綺麗な花が飾られ、部屋へと繋がる廊下は輝いて見える。
目を細めても家の奥は見えないし、いくつも部屋が並んでいる。
外から見れば他の家と変わらない普通の一軒家。
なのに、一歩家の中に足を踏み入れると、豪邸のように広い空間。
パチパチとまばたきを繰り返していると、
「ジゼちゃん?」
コウガが目の前で心配そうに手を振っていた。
「大丈夫?ボーッとしてたけど?」
「は、はい。大丈夫です。」
すぐ目の前にコウガの顔がある事に気づき慌ててそう答える。
するとコウガは優しい笑みを見せるのだった。
「魔力で構成してんだよ。この花も廊下も全て。」
ジゼルの様子に何に驚いているのか気づいた様子のリョーガは、赤い花にそっと触れながら言う。
「広さとか様式は魔力の大きさによって異なるけど。今は兄貴の魔力で構成してっからこんなに広い訳。」
「仕方ないだろ。お前がやったら家ごと燃やし尽くす。コウガは構造が複雑すぎて落ち着けないからな。」
ジゼルはリョーガの説明に頷き、コウガはヴェルディの言葉に普通じゃない?と返す。