善と悪の狭間で・・・
そう思って、両親は赤ん坊の笑顔と無事を信じ穏やかな表情になる…
だが、その表情は一瞬にして変化を遂げた…
顔色は真っ青に染まり、大きく目を見開く…
その見開かれた瞳に映ったのは…
口の端をつり上げ不気味に赤ん坊を見下ろす少女の姿…
赤ん坊を抱いていない左手は高々と上げられ…
その手には、血に染まった鋭い刃が握られていた…
ニッと歯を見せにやつくと、物凄いスピードで左手を振り下ろす…
「イヤーーーー!!」
止めてと叫ぶが、少女の腕は止まろうとはしない…
勢いのついたその刃は、無防備な赤ん坊の心臓へと、突き刺さる…
真っ赤な血液が、見開かれた瞳に映り、生暖かい血液が頬に降り注ぐ…
動かなくなった赤ん坊を、まるでボロ布のように投げ捨てると、血に染まった手で長く細い髪をとく…
母親は目を見開いたまま、震える手を赤ん坊へと伸ばし、その子を抱きかかえた…
腕の中の赤ん坊はぐったりとし、泣き叫ばない…
何度も名を呼び揺すっても、目を開かない…
その澄んだ、まだ何の濁りもないその瞳は、何も映そうとしない…
微かに開いた小さな唇は、ぴくりとも動かず、酸素を吸おうとしなかった…