善と悪の狭間で・・・
少女の握る刃の先から、耐えかねた血の雫が零れ落ちる…
無表情のまま彼女の視線の先には、先程の家族が血溜まりの中に倒れていた…
眠るように寄り添う家族をジッと見つめた後、少女は顔を上げゆっくりと辺りを見回す…
崩れた家の物陰から、恐怖に怯えた瞳で少女を見つめる者や、怪我を負いながら必死に逃げようと地を這う者の姿が目に入る…
そして、家族を護ろうと武器を手にする父親と、涙を流す子供を抱き締める母親の姿も…
「幸せなんて大っ嫌い………皆、居なくなればいい………」
何を見ても顔色を変える事のなかった少女は、突然ぼそりと呟いた…
すると、その声に反応するかのように、少女の背後でユラユラと燃えていた炎が勢いを増し、高々と燃え上がると真っ赤な炎の蛇となる…
少女の背後に現れた数匹の蛇は、クネクネと身をくねらせ、大きく開いた口で人々に襲いかかる…
逃げようにも、人間がそのスピードから逃れる事など不可能…
あっという間捕まり、腹を空かせた蛇の餌食となる…
恐怖と悲痛の悲鳴が飛び交う中、少女はただただその惨劇を見つめていた…
一向に変わる事のない、冷たい眼差しで…
陽の傾いた空は、まるで地を映し出すかのように、真っ赤な夕日に染まっていた…