善と悪の狭間で・・・
朦朧とする意識の中、嫌味な男を悔しそうに睨みつけていると…
「……っ………!」
男は突然唸り、少年の首を掴んでいない手で自分の顔を覆う。
妖しい笑みは消え、辛そうな男の姿に何が起こったのかと不思議に思っていたが、男の首を掴む力が弛んだその隙をつき男を力の限り突き飛ばす。
「ゲホッ………ゲホゲホッ………」
一気に入ってきた新鮮な空気に噎せながら、首を押さえ体から力が抜けたかのように壁に背を伝わせ床に座り込む。
「………クッ…………」
突き飛ばされた男はふらつきながら壁に背をぶつけると、顔を覆っていた手を恐る恐るゆっくりと放す。
「…!」
掌で隠れていた顔が見えた瞬間、少年は目を見開き息を飲む。
彼の澄んだ銀色の瞳に映ったのは、まるで何かが剥がれ落ちるかのように爛れる頬の皮膚…
顔の皮膚は原型を留めておらず、白い骨までも姿をちらつかせている…
「クソッ………」
男は再び両手で顔を覆うと、あっという間にそこから姿を消したのだった…