善と悪の狭間で・・・
「……ハァ………」
極度の緊張からかどっと疲れを体に感じながらも、少年はゆっくり立ち上がると何も知らずに眠っている少年へと目をやった。
「どう見ても、普通の人間みたいなのにな……」
そんな事を呟いていると…
何かが壊れるような爆音と共に塔が揺れ、頑丈な壁を突き破り茶色い巨大な鳥が姿を現した。
地震のような揺れに少年は尻餅を付くと、塔を壊してやって来た巨大な鳥を警戒するように睨む。
睨まれた巨大な鳥も少年を睨み返していると…
「あっ、リョーちゃん。」
その声と共に巨大な鳥の背から1人の少年が降りて来た。
優しく微笑む、短いブラウンの髪をした美形の少年である。
「コウ兄!」
彼の事を知っているようで、リョーちゃんと呼ばれた金髪の少年は驚いたように勢い良く立ち上がった。
コウ兄と呼ばれたブラウンの髪をした少年は優しい笑みを見せたまま巨大な鳥の頭を撫でる。
すると撫でられた巨大な鳥は嬉しそうに目を閉じると、そこから姿を消すのだった。
「どうしたのリョーちゃん、疲れたような顔して。」
金髪の少年に歩み寄りポンと頭を撫で優しく尋ねるが…
「んでもねぇよ。」
頭の上に置かれた手を嫌そうに払いのけそう言うと、腕を組んでそっぽを向いてしまった。
金髪の少年の冷たい態度に悲しそうな顔をしていると…
「無事だったようだな。」
突然背後から聞こえた声。
その声に金髪の少年は驚いたように振り帰り、ブラウンの髪をした少年は穏やかに声の主の方へと目をやった。
「兄貴!」
「ヴェル。」
ベッドの傍に居たのは、グレーの髪に黒い瞳の美形の少年だった。