善と悪の狭間で・・・
「いつの間に……ってどこから溢れ出て来たんだよ!?」
「リョーちゃん、それを言うなら湧いて出たじゃない?」
2人の反応を流しながら、ヴェルと呼ばれた少年はベッドで眠る少女を見下ろしていた。
「彼女か、俺達が護るべき少女は……」
一向に起きる様子もなくスヤスヤと眠る姿を見て、グレーの髪の少年はそう言葉を漏らす。
その言葉に金髪とブラウンの髪の少年も少女の傍に歩み寄るのだった。
「僕達一族が護り続けてきた子だね。」
「善と悪から護ってきた少女か……」
少女を見つめ様々な言葉を漏らしていると…
「んっ……」
ベッドの中で眠っていた少女がゆっくりと目を開いたのだった。
堅く閉ざされていた瞼が上がり、薄い茶色の瞳が姿を現す。
目を開いた少女は自分を見下ろしている3人の美少年を不思議そうに見回すと、ゆっくりと何度もまばたきを繰り返した。
目を覚ました少女を見て固まっていた3人。
まぬけな表情でポカンと口を開けていると…
「うわっ!」
ガタガタと塔が揺れだし、天井からパラパラと瓦礫が落ちて来た。
その揺れは止まる事もなく、その激しさは増して行く一方。
「レン兄!」
「えっ、僕?」
倒れないようベッドを掴む金髪の少年は、塔の壁を壊してやって来たブラウンの髪の少年を睨みそう言う。
だが、睨まれた少年は何の悪気もなく優しそうに笑うだけだった。
「否、そう言う訳でもないようだ。崩れる前にここから脱出するぞ。」
壁に空いた大きな穴を見た後、グレーの髪をした少年は落ち着いてそう判断すると逃げるように走り出す。
2人は走り出したグレーの髪の少年の後を追うが…
「おい、何やってんだよ!?」
「ぇっ……」
金髪の少年は部屋の扉の前で足を止めると、身を起こし動こうとしない少女を振り返る。
目を覚ましたばかりの少女は何がどうなっているのか理解できない様子で、少年の言葉にただ首を傾げるのだった。