∞いちしのはな∞

まともに吸い込めない酸素は
あたしの末端をピリピリと痺れさせ、徐々にそれは麻痺にも似た感覚を連れて来る。

トオルの焦りに混じった悲しそうな表情は、あたしの瞼を重くさせる。

ただ、もう疲れただけなのだ。

20代で不妊を言い渡され、社会では常に何かに追われ、愛する人を失う恐怖に駆り立てられ
単に疲れただけなのだ。


安定剤と謂う名の固形物は、ちっともあたしに安定などくれやしない。

なのに体はすっかり中毒のようで、ドクドクと脈動する深部が、其の固形を待ち焦がれる。

こんな時、ちゃっかりあたしは死を恐れて胸を押さえて苦しんでいる。





頭では、もう降参の白旗を高々と挙げていると言うのに。
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