∞いちしのはな∞
すれ違いなんて、
単なる一過性のもので
歩幅を合わせたらまた、簡単に戻れるんだと

思っていた。

彼女が泣いたのは、僕の前で泣いたのは
一体どれくらい前のことだったんだろう。

ゆっくりと体を動かし、ぺたりぺたりとフローリングを歩く起きぬけの彼女の頬に
細い髪が纏わり彼女をくすぐっている。

やはり僕は臆病者で、小さく丸まって銀紙を握り締めていた。

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