気狂いナースの注射芸
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美枝から渡された部屋の鍵を取りだし、有藤は鍵穴に差し込んだ。
一回転させると、鍵が開く音がした。
有藤は自分のハンドバックを肩に掛け、ドアノブを回して中に入った。
此処に入るのは二回目だ。
入った印象は変わらず「不自然に綺麗」な部屋。
玄関の靴箱の上には何も書かれていないホワイトボードがあるだけ。 以前に何か書き込んだ様子もない。
玄関から真っ直ぐに伸びる廊下には美枝の血痕が残っている。
靴を脱いで廊下を歩き、リビングの扉の右手にある水回りの入口のアコーディオンカーテンを開けると、やはり不自然に片付いた洗面台や洗濯機、風呂場への扉があった。
なぜだか、此処が一番不自然な気がした。
「…………」
自分が此処に来た理由を思い出した有藤は、アコーディオンカーテンを閉めるとリビングへと歩いて行った。
改めて眺めてみたリビングは、先程見たものと同一の部屋とは思えなかった。
あのソファも、テーブルも、テレビも、全て先程見た部屋と同じ配置。
なのに、何故こんなに違和感を感じるのだろう。
思考がグルグル回り出す前に、有藤は鼻で息を吐いてクローゼットへ向かった。
手早く着替えを用意すると、さっさと玄関に戻ろうと向きを変えた。
「なに、これ………」
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