気狂いナースの注射芸
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病院に戻って来た有藤は、車の鍵を閉めるのも忘れて走りだした。
ポケットの中には美枝の家にあった、あの写真。
夜中である事を忘れ、階段をかけあがった。
三階まで一気に上がり、廊下への扉を開けた。
「?」
扉の向こう側に何か重たいものが置いてあるのか、うまく開かない。
有藤は悪態を吐きながら扉を力いっぱい押した。
すると、扉はあっけなく開いた。
「なんなのよ………」
不審に思いながら、有藤は扉の反対側を覗き込んだ。
「…………っ?」
一瞬、こんな所で寝てるのかと思った。
それはナース服を着ていて、まるっこい顔の女性。
奈津子は死んでいた。
頭にはビニール袋が被せられていて、死ぬ前に泡を吹いたのか、口の辺りに白いものがあった。
彼女の右手首には、シルバーの二連ブレスレット。
有藤は写真を見た。
腰に手を当てて立っている有藤に、奈津子が腕を絡め、後ろで河野がピースをしている写真が、見事に捏造されていた。
背後から、嬉しそうな美枝の声がした。
「有藤先生…………!」
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